しかし、その過程は決して直線的ではなく、むしろ複雑で一進一退を繰り返すものではないでしょうか。本能の感覚が育まれるまでには、自分自身と向き合い、何度も迷いや葛藤を経験する必要があるのではないかと思います。その中で、私たちの中に現れる「顔」とも言える特定のパターンが繰り返し訪れるのではないでしょうか。
これらの顔は、利己的な部分を象徴すると同時に、成長のために乗り越えなければならない試練なのかもしれません。
たとえば、ある人が新しい挑戦を始めるとします。その挑戦の目的が純粋に「楽しさ」や「興味」から始まった場合でも、やがて「認められたい」という欲求が顔を出すことがあるのではないでしょうか。
誰かから褒められることや評価されることが大きなモチベーションになる一方で、それが過剰になると、自分が本当にやりたかったことが見えなくなることもあるかもしれません。この段階では、本能的な楽しさが一時的に薄れ、他者の目に映る自分が大きな比重を占めるようになることがあるように感じます。
それでも、この経験自体が否定されるべきものではないのではないでしょうか。他者の承認を通じて自分の存在価値を確認することで、新たな一歩を踏み出すきっかけになる場合もあるように思います。
また、ある程度の成果を手にしたときには、次に「比較」の壁が立ちはだかるのではないでしょうか。周囲と自分を比べることは自然な感情の一部ではありますが、これが過剰になると、自己否定につながることもあるのかもしれません。
たとえば、スポーツの場面で、自分と他の選手の実力差を意識しすぎるあまり、本来の目的を見失うことがあるのではないでしょうか。しかし、この比較はうまく活用することで、自分の成長の指針として役立てることもできるのではないかと思います。他人の成功をヒントにすることで、自分なりの進むべき道が見えてくる場合もあるのかもしれません。
さらに、ある程度の成果を収めると「達成感」による停滞が訪れることもあるのではないでしょうか。何かを成し遂げたという満足感は素晴らしいものですが、そこで満足しすぎると新しい挑戦を避けるようになることもあるかもしれません。
これもまた、利己的な部分が顔を出す瞬間の一つと言えるのではないでしょうか。小さな成功に安住することで、新しい可能性を見過ごしてしまうこともあるのではないかと思います。しかし一方で、この達成感を利用して次の目標を設定し、新たな挑戦を始めることができれば、本能の開花がさらに進むのではないでしょうか。
これらの顔は、一見すると本能の成長を妨げる障害のように見えるかもしれませんが、実際にはそれを促す大切な試練でもあるのではないかと思います。人は、自己承認、比較、達成感といった段階を何度も行き来しながら、自分自身を深く理解し、本能的な感覚を磨いていくのではないでしょうか。このプロセスにおいて重要なのは、どの瞬間も「今、自分はどう感じているのか」「本来の目的を見失っていないか」を問い続けることではないかと思います。そしてその答えを探る中で、本能は少しずつ形を成し、より純粋で深いものへと変化していくのではないでしょうか。
利己的なものを超越するということは、決して利己を否定することではないのではないでしょうか。それはむしろ、利己的な感情を受け入れつつ、その先にある本質的な感覚を見つける旅のようなものと言えるのではないかと思います。こうした試練を経て、私たちは初めて本能の花を咲かせることができるのではないでしょうか。