【色即是空】とは、「色（形あるもの）は実は空（実体がない）」という意味で、これは般若心経の一節に由来する。要するに、目に見えるものや出来事には絶対的な価値はなく、すべては移ろいゆくものであるという考え方だ。テニスにおいても、ミスやスコアにとらわれすぎると冷静な判断ができなくなる。しかし、「1ポイントのミスに意味はない」と理解し、それに執着しないことが重要だ。試合中のプレッシャーの多くは、過去のミスやこれからの勝敗を気にすることで生じるが、本来それらは実体のないものにすぎない。ポイントを落としても、それが試合の流れを決定づけるわけではなく、その瞬間に最善を尽くすことこそが大切なのだ。
一方で【空即是色】という言葉もあり、これは「空（実体のないもの）が色（形あるもの）として現れる」という意味を持つ。つまり、意識や心の在り方が現実の形を作るということだ。これはテニスの試合にも通じる。例えば、同じスコアの場面でも「負けたくない」と焦る選手と、「この場面を楽しもう」と思う選手では、プレーの質が大きく変わる。緊張した状態では筋肉が固まり、ミスにつながりやすくなるが、リラックスしている選手は自然なプレーができる。これはまさに「空即是色」の考え方であり、メンタルの持ち方次第で試合の流れが変わることを示している。
仏教にはもう一つ重要な概念がある。【諸行無常】という言葉だ。これは「すべてのものは変化し続け、永遠に同じ状態ではない」という意味を持つ。テニスでも、プレーの調子は常に一定ではない。昨日は絶好調だったのに、今日はサーブがまったく入らないということもある。しかし、これを悲観せず、「調子が変わるのは当たり前」と受け入れることで、試合中に余計なストレスを抱えずに済む。変化を受け入れられる選手は、プレーの改善もスムーズに行え、成長のスピードも速い。逆に「いつも完璧でなければならない」と思う選手は、ちょっとした不調に動揺し、自分を追い込んでしまうことが多い。
テニスにおいては、技術や戦略だけでなく、こうした【メンタルの柔軟性】が試合の流れを左右する。試合の勝敗は、単にショットの精度やフィジカルだけで決まるものではなく、どんな状況でも平常心を保ち、最善を尽くせるかどうかにかかっている。そのためには、仏教の考え方を応用し、「ミスを気にしすぎない」「自分の意識が現実を作る」「変化を受け入れる」といった姿勢を持つことが重要だ。
モチベーションを維持するためにも、これらの考え方を日々の練習や試合に取り入れてみるといいだろう。ミスに対する考え方を変えるだけで、試合中のメンタルの安定感は大きく変わる。何より、テニスは楽しむことが大切なスポーツだ。仏教の教えを活用することで、余計なプレッシャーから解放され、より良いプレーができるようになるはずだ。