上達のメカニズムとその差はどこにある?

テニスをしていると(何のスポーツでもそうですが)やっぱり「もっと上手くなりたい、少しでも良いラリーがしたい!」と誰しもが思うことでしょう。ある人はあっという間に上達するように見えますが、ある人はいつまでたってもなかなか上達しない、…と思っていると、なぜかあの人が爆発的に上手になったということはしばしあることです。

長い間、インストラクターをさせていただいていた経験上から、今回は「上達のメカニズムと差」についてお話ししたいと思います。

上達のスピードには経験の差が大きく影響します。

大きな結果や客観的な評価を受けた経験がある人は、その成功体験を糧にしてコツコツと努力を続けることができます。

何百回も何千回も繰り返し取り組むことができるのは、その過程で得た自信や手応えがあるからです。
一方で、そうした成功体験がない場合、少しでも思うようにいかないと「自分には無理だ」と感じ、努力を続けることが難しくなることがあります。

また、技術の習得には繰り返しの練習が不可欠です。すぐに上達するように見える人たちは、繰り返すことの大切さを本能的に理解しており、気がついたらその技術を何度も反復していることが多いです。 
しかし、多くの大人は時間の制約があり、子供は飽きやすいため、反復練習が不足しがちです。

この「量」の不足が技術習得を妨げ、「できない」と感じさせる大きな要因となっています。

さらに、メンタル面でも「できない」と感じる原因があります。  

快適な環境や耳障りの良い言葉に安住し、現実の厳しさから目を背けてしまうことがあります。新しい技術を習得するには、現状の自分を打ち破る必要がありますが、その過程で自信を失うことを恐れてしまう人も少なくありません。

フィードバックの受け取り方も重要です。

新しい技術を学ぶ際には、一時的にパフォーマンスが低下することがありますが、そのことを恐れずに基礎に立ち返り、適切なフィードバックを受け入れることが求められます。  

しかし、多くの人は都合の良い情報にすり替えてしまい、フィードバックをうまく活用できずに成長が止まってしまうことがあります。

自己評価のバランスも大切です。

自分を過大評価してしまうと、すぐに結果が出ないことに苛立ちを感じ、「できない」と思いやすくなります。  

逆に、自分の能力を過小評価してしまうと、せっかくの成長のチャンスを逃してしまうことがあります。特にテニススクールでは、自分の実力を正しく評価し、次のレベルに挑戦する勇気が求められます。

テニスでは技術に注力しがちですが、フィジカルの基盤も忘れてはいけません。

野球やサッカーのようにフィジカルトレーニングが習慣化されているスポーツと比べ、テニスでは体力や筋力のトレーニングがないがしろにされがちです。

大人になってからも、技術の向上を目指すにはフィジカルの強化が不可欠であり、それが不足していると技術的な成長にも限界が訪れます。

最後に、学習スタイルと指導方法のミスマッチも上達を妨げる要因です。

指導者が一方的な方法を押し付けたり、受け手が自分の固定観念に囚われている場合、技術習得が阻害されることがあります。それぞれの学びのスタイルに合わせた柔軟な指導が求められ、また受け手もオープンな姿勢で新しいアプローチを試してみることが大切です。

技術の習得には多くの要因が関わっており、それらを理解し乗り越えることで、上達への道が開かれます。自分にとって何が妨げになっているのかを見極め、必要なアプローチを取ることが、スポーツにおける成功への鍵となるでしょう。