『武術の新人間学』甲野善紀

甲野善紀氏の『武術の新人間学』は、単なる武術解説書を超えたものです。

この書籍を読むと、「文明が進化し、生活が便利になった現代においても、なぜ昔の人々のほうが人間として豊かだったのか」という問いに思いを馳せることになります。

伝説の雀鬼、桜井章一氏から本物の精神科医名越康文氏、他、各回の著名人の話や伝説の武術家の話にまで話は及びます。

甲野氏は、武術を通じて得た深い人間理解と自己啓発の手段としての可能性を探求し、その知見を我々と共有しています。


本書の核心は、「温故知新」—古きを訪れて新しきを知る、という概念に集約されています。

甲野氏は、武術の技術だけでなく、それを支える哲学や生き方に光を当て、現代人が失いつつある身体と精神の調和を再発見する道を示しています。

彼の言葉を通じて、昔の武術家が日常的に行っていた身体技術の重要性が、新たな文脈で理解されるのです。

特に興味深いのは、甲野氏が現代の生活にどう武術を応用するかを示す部分です。

彼は、武術の動作が単なる身体運動ではなく、精神的な集中と心身の一体感を高める手段であることを説明しています。

例えば、本書では足の使い方を詳細に解説し、どのように全身の動きと連動し、心の状態に影響を及ぼすかを科学的な視点から解析しています。

この部分は、ヨガや気功、瞑想の解説に近い内容であり、読む者にとっては深い洞察を提供するでしょう。

さらに、本書は甲野氏の豊かな人脈と、彼が出会った多様な人々のエピソードを通じて、武術だけでなく人間関係の築き方にも光を当てています。

彼の好奇心旺盛な探求心は、古武術だけに留まらず、舞や能、さらには日常生活の中での体の使い方にまで及んでいます。

また、自身の学びと経験を通じて、どのようにして一つの技術や知識を深め、それを生活全体に応用するかを示しています。

これは、単に技術を学ぶだけでなく、それをどのように生活に活かすかという点で、非常に参考になります。

『武術の新人間学』を読むことで、私たちは自己の身体と心をどのように扱うべきか、そしてどのようにしてより豊かで意義のある人生を送るかについて、深く考える機会を得ることができます。

甲野氏の提供する古武術の知識と哲学は、現代社会における生き方そのものについて考えさせるものであり、この書籍は、単なる技術の手引きを超えた、人生を豊かにするための指南書と言えるでしょう。

もちろん、捉え方を変えればテニスにも応用ができる内容だと思います。

武術の本質を学ぶことはどの分野においても大切なことだと考えざるを得ない一冊です。