綾の軌跡(短編小説/P作)

新生活、新しい町、そして新たな挑戦。綾は、毎日の家事と育児に追われる中、自分のための時間を持ちたいと感じていた。そんな中、夫の勧めで近所のテニススクールのチラシを手にする。

初日、緊張と期待に胸を膨らませながらコートに足を運ぶ綾。しかし、先生である昭彦コーチとの最初のレッスンは想像以上に難しく、ボールを打つことさえままならなかった。

週に1回のレッスンを欠かさず続ける綾。しかし、1ヶ月、2ヶ月と時間が経過しても上手くボールに当たらず、ラリーはほんの短い間しか続かなかった。その度に、自分の不器用さや進捗の遅さに落ち込むこともあった。

しかし、テニスは彼女のストレス発散の場となり、コートの中で汗を流しながら打つボールの音は、日常の悩みや不安を忘れさせてくれた。昭彦コーチの「焦らないで、自分のペースで」という励ましの言葉も、彼女を前向きに保っていた。

そして、4ヶ月を過ぎた頃、綾は徐々に自分のペースを見つけ、コーチとのラリーが続くようになった。この成功は彼女に自信をもたらし、ストレスを発散するだけでなく、前向きに物事を考えるきっかけともなった。

半年の節目を迎えたある日、綾はついに昭彦コーチとの長いラリーを成功させた。その瞬間の喜びは、6ヶ月間の努力と挑戦の結晶であり、彼女の心は達成感で溢れた。テニスを始めたことで、綾は日常のストレスを乗り越え、新たな自分を発見することができたのだった。