この二つの状態を区別し、それぞれに適切な対応を取ることが、インストラクターにとって重要な課題です。
生徒が指導内容を「理解しているが納得できない」というケースでは、感情的な抵抗や目標のミスマッチが原因となることが多いです。
例えば、「なぜこのやり方が正しいのか？」という疑問が解消されていないと、生徒は指導に対して消極的になり、行動に移すことが難しくなります。
また、自分の過去の成功体験や独自の考えが強い生徒ほど、指導内容に対して疑念を抱きやすい傾向があります。さらに、インストラクターの説明が生徒の目標や価値観に結びついていなければ、納得感を得るのは難しいでしょう。
一方、インストラクター側にも課題があります。「こうだからやりなさい」といった一方向的な指導では、生徒の「なぜ？」に答えられず、納得感を与えることができません。
また、短期間で成果を出そうと焦るあまり、生徒の理解や感情を置き去りにしてしまうケースもあります。このような場合、まずは生徒の目標や性格をしっかりと理解し、それに合った言葉や方法で説明することが重要です。
次に、生徒が「そもそも理解できない」場合について考えてみましょう。この場合、技術や戦術に必要な基礎知識やスキルが不足していることが原因です。さらに、インストラクターの説明が抽象的すぎたり、生徒の学び方や感覚に合っていなかったりすると、理解はさらに難しくなります。また、生徒がその日のコンディションや集中力を欠いている場合も、指導内容を吸収できないことがあります。
インストラクター側の問題としては、説明が複雑すぎたり、デモンストレーションが不足していたりすることが挙げられます。自分にとっては当たり前の感覚や技術が、初心者には難解なものに映ることを理解する必要があります。また、生徒の現状を正確に把握せずに高難度の内容を伝えてしまうと、かえって混乱を招きます。これを避けるためには、基礎に立ち戻り、生徒が理解しやすいステップで指導を進めることが大切です。
「理解」と「納得」の違いを埋めるためには、双方の課題に応じたアプローチが必要です。生徒側には、納得感を得られるように、指導内容と目標の関連性を丁寧に説明することが求められます。また、小さな成功体験を積ませることで、指導への信頼感を醸成することも効果的です。一方で、理解が不足している場合には、基礎的な内容をしっかりと復習し、具体的なデモや反復練習を通じて感覚的な理解を深めるサポートが必要です。
インストラクター側では、生徒の「なぜ？」に耳を傾ける姿勢が欠かせません。また、生徒ごとに最適な指導方法を工夫し、一方向的ではなく双方向的なやり取りを心がけることで、納得感を高めることができます。さらに、抽象的な説明を避け、具体例や実践的な方法を用いることで、生徒が自然に理解しやすい環境を作ることが重要です。
生徒が「理解しているが納得できない」状態と、「そもそも理解できない」状態のどちらにあるのかを正確に見極めることは、インストラクターにとって大きな責任でもあります。そして、この違いを埋めるためには、双方が歩み寄り、適切な方法で指導と学びを進めることが欠かせません。それぞれの状況に応じた対応を心がけることで、生徒の成長をさらに引き出せるのではないでしょうか。テニス指導においても、この「理解」と「納得」の違いを意識しながら、日々のレッスンを工夫していきたいと思います。