五輪書/宮本武蔵(原著)鎌田茂雄(訳、著)

社会人になってから武術に興味を持ち、少し手習いをはじめてからずっと読もうと思っていた『五輪書』をようやく手に取ることができました。


宮本武蔵という天下の大剣豪が、晩年に記したこの秘伝の書は、戦術や武道の奥深い洞察が詰まっており、現代語訳を通じてその教えがより身近に感じられるものでした。


特に彼が強調する「鍛錬」と「自己の思考」というテーマは、単に戦いの場だけでなく、現代に生きる私たちにとっても大きな教訓となるものでありました。


この本を通して最も印象的だったことは、武蔵がどの章の終わりにも、必ず「鍛錬を続けなさい」「よくよく自分で考えなさい」と説いている点でした。


彼はただ戦いに勝つための技術を伝授するだけでなく、それ以上に自己の内面を鍛え、何度も繰り返して熟考することの重要性を強調しています。


現代の社会では、何かを手に入れるために効率的な方法や、最短距離で結果を求めることが重視されがちですが、武蔵の教えはその逆を行くものです。彼は、安易に結果を求めることなく、日々の小さな積み重ねこそが最終的な勝利につながると説いているのです。


また、この鍛錬に対する姿勢は、武術だけでなく、あらゆる分野に通じる普遍的なものだと感じました。


例えば、私が教えるテニスにおいても、選手たちは常に勝利のための技術や戦術を、知識として理解しようとします。多くの人が、できるだけ効率的に、最短ルートで上達しようと考える傾向があります


もちろん、技術的な理解は大切です。しかし、それだけで勝利に直結するわけではありません。


武蔵が繰り返し言及しているように、日々の鍛錬と、自分自身でよく考え、試行錯誤を重ねることこそが、最終的な結果につながるのです。


『五輪書』の中で、彼が何度も「鍛錬」を強調する背景には、彼自身の厳しい修行の日々があったからだと感じました。


彼は、単に剣の技術を磨くだけでなく、心の強さや、相手を深く洞察する力を培っていったのでしょう。このような鍛錬が積み重なってこそ、彼は無敗の剣豪としての地位を確立したのだと思います。私たちもまた、結果を焦ることなく、日々の練習や学びを大切にしていくことが重要なのです。


特に印象に残ったのは、彼の教えがただの戦術や技術論に終わらず、自己を高めるための哲学として書かれている点です。


彼の言葉は、剣術だけでなく、人生においても同じことが言えるのではないかと感じました。どんなに困難な状況であっても、日々の努力と考える力を持ち続けることが、最終的な成功への鍵であるという考え方は、現代に生きる私たちにとっても大いに共感できる部分です。


この本を通じて感じたのは、宮本武蔵の教えが今の私たちにも通じる、普遍的な真理を含んでいるということです。


テニスを教える際にも、選手たちが勝利を急ぐことなく、日々の練習を大切にし、試行錯誤しながら成長していくことの重要性を伝えたいと思いました。


特に、日々の小さな努力が積み重なってこそ、大きな成果につながるという教えは、私自身がテニスを指導する中で強く共感できる部分です。


テニスにおいても、常に言葉の中の知識として技術を得たり、勝つことのできる道を最短ルートで見つけようとしてしまいますが、実は宮本武蔵翁が言っているように、日々の鍛錬、つまり毎日の練習や考え続けて、自分なりに創意工夫・試行錯誤を重ねること、しかも正しい方法でと言うことは、すべての物事において言えることなのだと深く感銘を受けました。


これからも宮本武蔵の教えを胸に、日々の鍛錬を怠らず、自分自身を高めていく努力を続けていきたいと思います。彼の教えを通じて、結果よりも過程を大切にし、その中での学びや成長を楽しむことが、最終的には大きな成果を生むのだと、改めて実感しました。